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2021年夏、ようやく本になりました。

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振り返ってみると、04年はひとつのトレンドのターム(期間)が終わったようだ。というのは、ここ数年、若い世代のトレンドが出尽くした観がある一方、30〜40代に積極的な姿勢が見られたからである。具体的には、女性にはフリルやファーのディテール、レイヤード、上品なデニムスタイル、男性ではモード靴やアクセサリー使い、タイトフィットなシルエットなど。

若い世代のレイヤードファッションは99年ごろから登場し、その後は大きく変化しないまま、小物やディテールで少しずつ着こなしを進化させ今日に至っているが、そういったストリートの流行を30代、40代が取り入れ、「私もまだトレンドの主役よ!」と主張した1年だったといえるだろう。

思えば8月に盛夏にロングブーツを履く「ファッション・アディクト族」をストリートで各員したのは00年代のこと。理由を聞くと「トレンドを先取りした」のだと言う。春に秋冬ものを購入し、秋に来春もの手に入れる。そういう「先取りしたい」という消費者のニーズは、フリーマーケットやネットオークション、古着屋、展示会・受注会を活性化させ、とうとう04年11月の某百貨店(*1)の店頭には来春の商品コーナーが設けられるまでに(!)。その背景にあるのは、ショップやブランドよりも「見た目のトレンド感」を「旬なとき」に「人より早く」楽しむことを重視するという価値観である。

こういった現象はファッションに限ったことではない。同じく99年ごろから急増した「カフェ」という飲食業態や自転車、バイク、音楽プレイヤーなど、若者から大人へと波及・成熟。あっという間に商業的なものへと進化していったのは記憶に新しい。

ある種享楽的な価値観が巷に溢れたことで、意識としてはそれを否定し、さらに一歩先を行きたい、という「超・消費者」が増えるのは当然の流れだろう。別注やカスタム、オーダーメイドといった「わたしだけのもの」をという意識や、流行の最先端でなくなっても「商品としての魅力が衰えないもの」への選択眼は、消費の偏差値の高い東京人ならではの新しい価値観といえるだろう。

そしてもうひとつ注目したいのは、どこのブランドの何という商品であるかをあからさまに見せない、わからなくする=「隠す(stealth)」という価値観だ。雑誌『composite』の発行人S(*2)さんによると、「stealth fashion」は欧州のクリエーターの日常着なんだとか。何でも「消費化」してしまう東京マーケットの次のトレンドになるのは必至?

(*1)伊勢丹百貨店新宿本店のこと
(*2)菅付雅信さん。先頃自身の仕事をまとめた書籍『編集天国』を上梓。